台湾の不思議なおじさんの話
学生特権で勝手に春休みを作って、旅行にいってきました。
行き先は、台湾!
女子3人旅にほどよい日本からの距離、治安、物価、ということで選びました。
何を食べても美味しい!
物価が(だいたいは)日本の半分以下!
気候が温暖!…と思ったら案外寒かったけど、
とても快適で楽しい旅行でした。
台湾で、迷子の私たちを、案内してくれたおじさんがいました。
地下でふらふら迷っていた私たちに声をかけてきた、前歯のない、とても身綺麗とはいえないおじさん。
私たちの胸はざわつきました。
このひと、大丈夫かな?
おじさんは、迷っているの?どこにいきたいの?と中国語で言ったようでした。
ガイドブックを見せていきたい場所を指すと、どうやら案内してくれると言っている様子でした。
え、ついて行って大丈夫?
突然車に乗せられて、どこかに売り飛ばされたりして?!
いやいやまさか…でも案内したから、ってお金は請求されるかもね?
いざとなったら走って逃げよ。
私たちは小声で話し、チラチラ目配せしながら、とりあえずおじさんについていきました。
どんどん地下街を進むおじさん。
不安と疑いの眼差しでおじさんを見つめつつも、ついて行く私たち。
地上に上がるエレベーターを待ちながら、おじさんは私たちに、中国語はできる?と聞きました(たぶん)。
できないと答えた私たちに、片言の日本語で、「ありがとう」と「さようなら」の中国語を教えてくれました。
エレベーターに乗って地上にあがると、そこは、デパートの目の前でした。
エレベーターを降りると土砂降りで、傘を持っていないおじさんはびしょぬれでした。
デパートはあっちだよ、と指差し、私たちがデパートを見て振り返ると、おじさんはいなくなってしまいました。
気がついたときには、もう背中は見えませんでした。
せっかく習ったのに、ありがとうも、さようならも、言えないままでした。
あれは、なんだったんだろう。
なんの見返りも求めず、おまけにびしょぬれになって、お礼も言わせずに、去って行ったおじさんのことを、時々思い出しています。
いつか会えたら、ちゃんと中国語でお礼を言いたいなあ。
台湾の、優しい不思議なおじさんのお話でした。